写真はGenipaの実、南米でボディペインテングに使われる染料、濃い青が得られる。写真はいずれもネットから。

前文;

レヴィストロース神話学第
3巻「食事作法の起源L’origine des manières de table」を引き続いて紹介します。同書第2部「神話から物語りへDu Mythe Au Roman」を今投稿で取り上げます。

過去のHP投稿ではこの2部には解説を入れていない。理由として小筆(部族民通信・蕃神)の読み落としに他ならないのだが、他の部、章と比べ論調に感じた違和も指摘しよう。神話を取り上げ解析するがこのシリーズの本筋であるとすれば、その筋立てからは離れている。神話群をまとめての分析に入っている。その意味合いに理解が至らなかったからである。

なお食事作法の起源の過去投稿は;
(各項クリックでリンクする)

食事作法の起源を読む 1
同 2
同 3  
同番外パラダイム 
同PDFのまとめ
起源を読むの続き 1
同 2

 部族民通信ホームページ   開設元年6月10日 投稿2019年10月31日
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   神話から物語りへDu Mythe Au Roman 1  
 (人類学 投稿2019年10月31日2に移動 3に移動
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蕃神(ハカミ)義男
 
レヴィストロース神話学第3巻「食事作法の起源」2部「神話から物語りへDu Mythe Au Roman」を取り上げます。

とあるきっかけがあった。

最終巻「裸の男L’homme」。読み進んで「単純な構成の神話が伝播を重ねると複雑化する」現象が目の下の頁のすきま行の狭間に書き込まれている。これこそ「以前、読み飛ばしたあのが教えていた現象に他ならない」にはたと気づき、幾重に頁を戻し幾ひねりか読み直し、はたまた膝を手で打った次第となります。

本書「食事...」2部「神話から物語りへ」はページ数32にして部では小作りである。しかるに神話の群として秘める思考、伝播の過程、さらに「仮想空間」を族民らが想定し、その狭間に熟成されて行く筋道そして提題と解決。これらが神話群を理解する鳥瞰図を得るに欠かせない方法論であると、読み終えて気づきます。

文通しての伝達中身は「単純な構成の神話が」そのものです。傍証に「転がりがん首」「太陽、月、星の創造」神話群を取り上げ、筋道、展開などで、一群としてまとまる範囲と、奇想天外を濃く色づけ「物語り」に変身した語り物との比較となります。

面白ろおかしい読み物に「逸脱する」神話の仕組みを取り上げています。


写真:アマゾン流域の部族地図(本書から)クリックで拡大画像

がん首神話群の一例を紹介;

M391 Tembe族 転がる首 (本書73頁、Tembe族はアマゾンの河口右岸に居住
写真を参考)

幾人かの狩人が森奥にキャンプを張り、日がな一日狩りにでる。豊猟が幾日も続いたから獣の首、皮、内臓が至る所に転がり、キャンプ場はまさに屠殺場に変わっていた。男達が狩りに出ている間は、少年が肉の燻蒸を請けもっていた。ある昼下がり;

Soudain, il vit surgir un inconnu qui inspecta le gibier d’un air mecontent, compta les hamacs et s’enfuit>突然見知らぬ男が浮き出るように現れた、獲物を調べテントに入りハンモックを数えた。その目つきには不満、怒りがこもっていた。

戻ってきた男達に少年は見知らぬ外来者の行動を語った。彼らは「作り事」として取り上げなかった。<Dans la nuit repeta l’histoire a son pere et il reussit a l’alarmer. Tous deux decrocherent leurs hamacs et allerent dormir dans la foret>夜になって少年は父親に先の話しを繰り返し、父に葉やっと事の重大さを気づかせられた。二人はハンモックをたたみ、一夜を過ごすため森に出た。

Peu apres程なくして

ils entendirent des cris d’animaux nocturnes, des gemissements humains et le craquement d’os brises. C’etaient le Curupira et sa bande, esprits protecteurs du gibier , qui massacraient les chasseurs irreverencieux>

二人はキャンプ場から「夜の獣」の吠えと人の呻き、さらに骨の砕ける音を聞いた。Curupiraと配下の獣である、自然に不敬をはたらく狩人を殺戮する「獣たち」の守り神である。

一夜明けて、キャンプ場に戻った二人は血だらけ、凄惨な光景を目のあたりにする。転がる首級の一つが「村に連れ戻してくれ」と懇願する。父は息子を先立たせ、己は首を紐にくくり背負い込んで後を追う。しかし恐ろしさが先立ち、首を放り出した。それでも首は転がりながら追いついて乞い願う。<L’homme pretexta un besoin pressant pour s’isoler ; il courrut plus loin et creusa une fosse qu’il recouvrit de feulles au milieu du sentier. Comme la tete s’impatientait, les excrements du chasseur repondirent a sa place qu’il n’avait pas termine>

男は必要ができた(排泄行為)ので一人にしてくれ、首を置いて森に入った。走ってできるだけ遠くに来て、道の真ん中に穴を掘って葉を埋め込んだ(排泄後の作法)。待ちきれず追いかけた首が、葉もこんもり盛り上がった排泄穴から屎の「まだ終わってないよ」の声を聞く。

首は<Quand j’etais parmis les humains, remarqua la tete, les excrements ne parlaient pas>儂が人間だった頃から屎が声を出すなんて事は無かったぞ(ヤツはこの穴に隠れているのだ)と穴に転がり込んだ。すかさず男は泥で穴をふさいだ。一晩中、首の泣き叫びが村に響いた。首は人食い鳥に変身して穴から抜け出て出会った村人を襲った。呪い師の一矢が鳥の目を右から左に突き抜いて、人食い鳥は死んだ。

 

M391神話の筋道を展開すると;

1      発端は禁忌破りである(自然との調和の戒めを破った「狩り過ぎ」)

2      首は人間界への復帰を願う。多くは出会った者、あるいは縁ある者に運ぶよう懇願する。

3      背負う人間に首は悪さを行う(食べ物を横取りする、背に排泄するなど。M391では恐怖を与える)

4      背負い人は「首」を仲間とは認めず、人間界()に入る前に工夫を凝らして首から離れる。M391ではあたかも屎がしゃべったかの声色仕掛けで首を出し抜き、穴に落とした(男が屎にしゃべらせる魔術を使ったとの解釈もありうる。こちらの方が自然だ。なぜなら息子と二人してこの危機を気づく予知力をもっていたから)。他の神話でも木に登る、網を仕掛ける、ピラニア棲む溜まりに入るなど、騙し工夫の凝らし振りが展開する)

5      首は復讐する。復讐の根拠を陳述する場も設けられる。

6      かならず首は天に昇る。多くが月になる(M391では人食い鳥に変わるが、最終に月または目につく天体(astres)になるはずです。この語りではそこまでを言及していないが)

 

ここで上記に戻り

1 神話とは、発展する物語とは何か?

2 神話を逸脱し、なぜ物語に向かったのか?

3 神話群が形成する「範囲」とは何か?

 

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M391と同系統の神話を紹介;

M392 Kuniba族 転がるがん首と月の起源 本書75頁(Kunibaはアマゾン支流Jurua川流域に住む、上掲の写真拡大を参照) 

誰と告げない男の問いを毎夜、娘が受ける。その夜、娘はgenipa(南米で用いられる紺色の染料)を男の頬に擦りつけた。

Elle decouvrit ainsi que son amant etait son frere. On chassa le coupable ; pendant qu’il fuyait , des ennemis le tuerent et lui couperent la tete>翌朝、男は実の兄(frere)であると娘は知った。村人は罪を犯した者(le coupable男性であるから、罪は兄にのみ被さる)を追放した。あてどない彷徨いのすえ敵に捕まり首をはねられた。

弟(un autre frere)は兄を追って森に入り、首と果てたその姿を見つける。首は「背負って村に戻せ、水を呑ませろ、食物を出せ」ひっきりなしに要求する。耐えきれず弟は首をひどく打ち、放り出し村に逃げた。

転がりながら村にたどり着いたがん首、娘の屋(実家であるが成人の兄はそこには住まない)に入らんとしたが戸を閉じられ願いは叶わない。

elle envisagea l’une apres l’autre plusieurs metamorphoses : en eau, en pierre, etc. Finalement , elle choisit d’etre la lune et s’eleva jusqu’au ciel en deroulant une pelote de fil. Pour se venger de sa soeur qui l’avait denonce, l’homme change en lune l’affigea de la menstruation>

<首は何者かに変身しようと一つ、もう一つと願いを巡らせた。水、石、その他いろいろ。最後にたどり着いたのが月だった。つなぎ合わせの糸をたぐり天に昇った。秘め事を村人に密告した妹(soeur)に復讐せむと月の障りを引き起こした。

月と女の月経の起源神話です。

 

M393 Cashinawa族:月の起源 76 (同族はアマゾン支流Jurua川流域、先のKuniba よりも上流に居住)

対抗する2の部族。男が一人で移動するなか、敵のどう猛な戦士にばったり。逃げんとするが敵は彼をなだめ、さらに筒にあふれんばかりの矢まで進呈した。敵戦士の言い分は「我が家を訪ねてくれないか。実は、我が嫁は族外人にいつも首ったけなるのだ=afin de rendre visite a sa femme qui serait certainement ravie d’accueillier un hote etranger」妻の家とは女屋なので戦士夫は常には住まない。

有頂天になって髪に持ち合わせの鳥羽を立て、道すがら果実をむしって歯を黒に染めた(男が女に言い寄る正式な容体らしい。上下の背広に花束か)この後、男が敵陣女屋に立ち入る場での衒いが先んじ躊躇する。夫である敵戦士に「励まされ」容姿をさらに整える仕草などが続く。すっかり云いこめられた男は、戦士たるにあり得ない信じやすさに支配されている。それなら戦士失格だ。この見境無しが罪悪と思わせる。そして敵戦士妻の<festin plantureaux>の饗応を享受した。<plantureux>は1に食物が豊富なる様、2に肉体の豊満なる意味を持つ。たっぷり食物を頂いたのか、豊満肉体を堪能したのかのいずれかは書き込まれてはない。小筆の邪推かもしれないがfestin宴会を「寓意」として解釈すれば、豊満肉体のもてなしを受けたもと読めるし、それが後の筋につながる。

帰路、男は敵戦士におそわれ首をはねられた。これが信じやすさの罪と罰。

がん首ながら転がり続けて村に戻る。しかし村人からは受け入られない。この経緯は前M392と筋立てを同じくする。何に変身しようか、首の自問自答が最終の段に;

Que vais-je devenir ? se demanda la tete. Des légumes ou des fruits ? On me mangera. De la terre ? On marchera sur moi. L’eau ? On la boira…>人間には戻れない、何になったらいいのか、首は一つ二つと変身候補を自問した。野菜あるいは果実?人に喰われてしまう。土、踏みつけられてしまう。水、呑まれる以下;魚、毒流しの毒草、獣、蛇、樹木と数え上げるがいずれも人に役立つかさもなくば、嫌われ疎まれしまいに殺される。<La pluie ? Je tomberai, les rivieres grossiront, vous pecherez des possoins bons a manger>雨に?そうなると私は降り川に注ぎ、流れを太らせ魚が増えて、人がそれらを獲って食べるじゃないかこの調子で変身する身の先が決まらない。

J’ai une idée ! De mon sang, je ferai l’arc-en-ciel, chemin des ennemis ; de mes yeux, les etoiles ; et de ma tete , la lune. Et alors, vos femmes et vos filles saigneront> Pourquoi donc ?> demanderent les Indiennes effrayees. Et la tete répondit : Pour rien.>そうだ、これがいい。私の血は虹になる、敵がそれを伝わりやってくる。目が星になる。この首は月に変わるのだ。そしておまえ達の妻、娘らが血を垂れ流すのだ。閉め切っても戸板越し、聴いていた女共はおののいて何のためにと尋ねる。「何のためにもならないからさ」首が答えた。

首の希望通りに虹が架かり、敵の通り道ができた。夜になっては、この世で始めてのことだが星が瞬き、月まで空に上った。その夜から女共に月の障りが発生し、夫と同衾して子を孕み、1010回分の経血が胚にたまると子が生まれる。女の仕組みができた。

首が予言した「何のためにもならない」とは経血の垂れ流しの事だが、それが女に周期性を授け、女をして人なりに文化を享受できる身分に引き上げたうえ、人の再生産能力(子を孕み産む)を保証した。月の御利益たるは大変なモノだ。一方でそれら女の周期性、再生産こそ「何の役にもたたない」と断定するがん首の、原点からの見解を正統とすれば、それはそれなりの説得力で迫ってくる。

 

もう一話、

M255 Mundurucu族:夏太陽冬太陽の起源 74頁(Mudurucuはアマゾン中流域に住む)

前段:敵部族は2兄弟を殺し首を狩り持ち帰り、壺口の上に置いた。兄は見てくれがよく弟は悪い。なぜなら弟は母(月)と近親姦に耽ったからである(frereとのみの記述なので兄、弟の区別は分からない)。首級は図体の大きな少年に見張られていた。

il possédait des dons chamaniques et fut surpris de s’apercevoir que les tetes parlaient. ((elles se préparent a monter au ciel !)) cria-t-il a l’adresse des anciens. Mais tout le monde crut que le gros garcon mentait. 少年は魔術力を持っていた。しかしながら、首がしゃべるのには驚いた。大人に「彼らは空に上る準備をしている」と告げたが、皆は嘘と信じなかった。村人は髪を羽で飾り、頬を赤土で塗るなど首級に死化粧を施した。そして正午、妻を伴い首級は上り始めた。村人は矢を射掛けるがむなしくはずれる。妻(月)が懐妊して上り遅れた醜い首級を少年が捉え、目を抉った。

兄弟は太陽と月の子であった。天気が良い時は、見てくれの良い首の出番である。彼は夏太陽の表情を持つ。暗い日には見てくれの悪い首が出てくる。妻なる月も見え隠れする。これをして冬の太陽とするが、彼は醜さと目の空洞を恥じ入りすぐに人から隠れる。

 

M391~M2554神話を紹介した。

いずれも天上の存在(月、太陽、主要な星座など周期性をもたらす天体)の創造神話である。似通いからして同類と見なすのは自然だがそれに論理というか、根拠を示さなくてはならない。

本書72頁に戻る。

M354(本書「食事作法の起源」の基準神話モンマネキの冒険)について<inexplicable sous l’angle syntagmatique, releve d’un paradigme ou il occupe, par rapport au mytshe sur la Chevelure de Berenice, une position derivee ; autrement dit , M354 inverse M130, non le contraire>72頁)

モンマネキ神話の連辞(syntagmatique)側面には浮き出てこないけれど、範列(paradigmatique)に主張が宿り、M354M130の反対(の範列)であり、その逆はあり得ない。

Syntagme, paradigmeをスキームに取り込み、同類比較に用いよとの教示であろう。ならば、その手法を駆使して神話群分類法を考えてみよう。次回をお楽しみに。

神話から物語りへDu Mythe Au Roman 1 了
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