*神話学第4巻「裸の男」のFinale(フィナーレ)で両者の関係をcongruenceと決めつけるEntendement(考える力)をdeduction transcendantale先験的演繹とした。両者に人への食物(文化)供与者との思想付けをして、文化とは何かの演繹と合わせ、二重の演繹回路を絡み合わせた思考がここに認められる。それをして先験的とした。もう一方の演繹はdeduction empirique経験的演繹で、こちらは人とジャガーを(肉食故に同類とする)一回りのみ、経験で観測できる演繹を言う。
先験と経験の使い分けは人類共通なので世界中の神話が「言語や音楽」と同様に似通う=登場者(動物)と筋立て=根拠としている。
なお先験的演繹、経験的演繹はカントの用語で、レヴィストロースがそれらの意味するところも同じに遣い分けている

モンマネキが下ったSolomoes川
リオネグロ(黒い川)との
合流部。流域にマナウス市。
彼はインコ妻を捜しに
どこまで下りたのだろうか。
(写真はネットから)
Tukuna族の家族、撮影は20世紀初頭(ネットから採取)
Tukuna族および、Arrawak,Warrau族の居住域
写真クリックで
部族マップ(写真3)に
本書の表紙 右は太陽神、左に月の神。アラパホ(北米インディアン)の伝承から
モンマネキに樹液シロップを与えたキツツキ妻(本書挿絵
 部族民通信ホームページ   開設元年6月10日 更新
 
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   神話学第3巻 食事作法の起源を読む 1(人類学)   
(1,2,3では本書の前半を取り上げた。ここまでが南米先住民の神話解析です。
いわばBororo族火の起源神話M1から続いた、文化創造の結論とも言える。各投稿に接し、またPDFを開いて
読者諸氏にはレヴィストロースの思想に親しみを持つことを期待します 蕃神
 2019年9月30日)
 
  クリックで各投稿に飛ぶ

神話学第3巻 食事作法の起源を読む 1  
 モンマネキ神話、同盟結成への希求、失敗

神話学第3巻 食事作法の起源を読む 2  
アサワコの失恋、遠すぎた同盟

神話学第3巻最終稿 
事作法の起源を読む 3  いかにして創成されたか脆弱な基盤
本書該当の章に掲載される図をPDFとし、計3図作成した。これを理解すれば本書(前半)は全て理解するも同然(ロゴをクリック)
1基準のM1神話とモンマネキアサワコを比較した
2 文化の3角形
3 文化パラダイム
 
構造主義の視点から新大陸先住民の神話を分析する「構造神話学」。投稿子はこれまで1巻(le cru et le cuit生と調理)と第2巻(du miel aux cendres蜜から灰へ)の解説をGooBlog及び部族民通信のホームページに投稿しています。今回3巻目となる「食事作法の起源L’origine de la manierre de table」を投稿するにあたり、GooBlog20181022日から1116日終了の10回のBlog内容を加筆して展開します。

本書の紹介;
「食卓作法
*の起源」(みすず書房渡辺公三など訳)を借りると;
序 第1部 バラバラにされた女の謎 I 犯罪の現場で II つきまとう半身 第2部 神話から小説へI 季節と日々 II 日々の営み 第3部 カヌーに乗った月と太陽の旅 I 異国的な愛 II 天体の運行 までとなります。それらの舞台は主として南米、アマゾン上流のTukuna族、下流のWarrau族などからの引用が多い。1ではここまでを取り上げます。

 「続き」を本年10月以降に投稿する予定です

4部 お手本のような少女たち I お嬢様であるとき II ヤマアラシの教え
5部 オオカミのようにがつがつと I 困難な選択II マンダン風臓物料理
6部 均衡 I 一〇個組 II 三つの服飾品 となります。

神話学13巻の結語とも思える III 神話のモラル (原題はLa morale des mythes=あらゆる神話の共通する精神性=と訳したい)を最後に取り上げます。

本書巻頭の基準神話(M354狩人モンマネキの妻問い譚)の紹介とその神話群の中での位置を投稿子なりの解釈で展開しました。基準神話とその派生となるいくつか神話のまとめとして、レヴィストロース自身が社会、天文、地理などのコード進行に分解して表としてとりまとめています(写真は同書137頁)。これらが本書前半、南米先住民から採取した神話叢分析の結論となります。

(題名について;「食卓」作法を訳に当てる場合が多い。しかし仏語のtable(食卓)の作法は食物の選択なども含み範囲は日本語の「食卓]マナーより広い。単なる食べ方規制を彷彿させる「食卓作法」を避け「食事作法」を採った次第です)

 

一巻から三巻までのあらましを前文としてここに置きます。長いので別頁だてに。

クリックを。

本書冒頭に引用されるモンマネキの冒険譚(M354Tukuna族)。

口承担い手のTukuna族をWikipediaに訪ねると、ブラジル(アマゾニア)ペルー、コロンビアでかつて有力先住民であった。現在も同地区に4万を超す人口を数える。族内婚を実践している、言語的には孤立しているとある(Tikuna族とも呼ばれる)

モンマネキについて;。

猟師(chasseur)である。あらゆる神々(les demiurges=俗神)の合意により(水世界、洪水の地から)釣り上げられた。神々はモンマネキをして新たな人間世界(la premiere humanite)を創造せしめると決めたわけだ。老母と共、親子二人の最小家族で、火(M1bororo神話に源をたどれば、ジャガー妻(人の女)から盗んだ調理(文化)と狩猟(道具と技はジャガー譲り)で村を成した。文化の最小限の火と肉(野ブタ)は手にしている。

この設定はまさに;

鳥の巣あらし・火の起源神話(M1)の後日譚となります。モンマネキを理解するにM1(生と調理)をさらうとBororo族の英雄の名はバイトゴゴ;

バイトゴゴは成人式を迎えるその日に上下婚(母子たわけ)犯し、父に咎められ金剛インコの巣あらし(雛を盗む)を口実にして、断崖(天上)に放逐される。ジャガーに身を寄せ(弓矢での)狩りを学び、火を用いて調理する文化に接した。ジャガーはバイトゴゴにして配偶者(ヒトの女)殺すを認めた。神々の意志は文化(狩りと調理)を(ジャガーではなく)人に託すと決めたと分かる。ジャガーは森(自然)に入る。トカゲにやつして村に戻り、父と婚(たわけ)相手の実母も含む複数の母を殺す。村は洪水に襲われ村人は流され全ての火が消える。身を寄せていた祖母宅のカマド火(ジャガーから盗み取った火)だけが残った。

(ジャガーが獲物を狩り、火を管理する女が調理する。この組み合わせを俗神連は文化として試したのである。しかしジャガーの自然復帰願望で、人間女は殺され、人獣文化が破綻した。第二巻「蜜から灰へ」の主題「喪失」とはこの混淆楽園の喪失に他なりません)

モンマネキの新たな文化生活では(老母なので)近親姦はなし、母系の女親族との軋轢を抹消した(村人全員流された)、部族制度は未整備なので(支族を別とする)父親との諍い無し、生肉喰らいの悪習なし。最低限の文化要素からの開始である。

1巻と3巻の関連についてレヴィストロース自身の声を引用します。

モンマネキ神話とは全神話の基準となる「M1」の直系子孫であると読めば、本書第3巻の理解は易しい。

En verité depuit le debut de ce livre, nous navons discute quun seul mythe.Tous ceux que nous avons successivement introduits lont ete dans lintention avouee de mieux comprendre celui dont nous etions parti : le mythe tukuna M354, qui raconte les mesavantures conjugales du chasseur Monmaneki>>(本書163)

訳;実際のところ、本書でははじめからある一つの神話のみを語っていた。次々と続いて開示された神話とは、それを初めとして出発した神話をより正しく理解するためで、その意図の元に引用された。あの(最初の)狩人モンマネキと嫁問い失敗譚を伝えているM354tukuna族の神話がそれである。

物語では奇怪な婚姻の5例が語られる。

M354 Tukuna族モンマネキの妻問い譚;

神々は彼と祖母を洪水から釣り上げた。祖母は老母に身を変えて(母子婚は有り得無いとの意味)狩りと火(調理)を基盤とする社会が始まる。しかし狩りと調理は文化の一断面に過ぎない。再生産、次世代を造る婚姻同盟が発生しない限り、文化は継続しない。モンマネキの妻問い譚から再生産活動が始まる。

ようやく探し出した婚姻の相手、しかし奇怪。

狩りの行き帰りの道すがら、カエルの跳ねる様を観察するを常としていた。ある日戯れに(樹木棲の種)カエルの穴に小便を垂らした。しばらくしての朝、いつもの道ばたに彼が見たのは、

Un jour, une gracieuse jeune femme parut a cet endroit. Monmaneki s’etenna qu’elle fut enceinte : Tu es en cause, car tu pointais ton penis vers moi>(食事作法の起源17木立ちにまみえる妙齢婦人が際だつその麗しさ、枝葉したたりに構えモンマネキに向かう。恨みがましく「身ごもるこの子の父はお前だ。男根を妾(わらわ)に向けおしっこしたではないか」告げた。 (おしっこで再生産ができたとは)仰天するモンマネキ、娘を配偶に迎えた。「道ばたで拾った嫁ゴは何とも綺麗なことよ」姑は喜んだ。

狩りに向かうも夫婦は一緒。仲むつまじく過ごした。ある日、嫁が用意している調理の壺を姑が何気なく覗くと、ゴミ虫やらムカデがうごめいていた。「こんな汚い物を息子に用意いしていたとは」ヒトの食物に整えるため辛子をたっぷりかき混ぜた。

その夕<la femme fit chauffer sa petite marmite personnelle et commenca a manger, les piments lui brulerent la bouche. Elle s’enfuit, et sauta dans l’eau sous la forme de grenouille>(同)いつもの通りに鍋を火にかけ料理して、その食物を口にした嫁の口が辛子で焼けて、食卓から逃げ出し沼に飛び込みカエルに戻ってしまった。

母と息子だけの一家にカエルが嫁いで、婚姻同盟が結成されたから、曲がりなりにも人の社会が開始した。しかし食事の中身(昆虫食)が文化規範(ブタ肉の唐辛子まぶし)から外れていた。食事作法で姑の眼鏡に適わなわず、文化創成で妥協を決して許さない姑ちょっかいで破談となった。

人とカエルの混淆の一粒種は嫁が取り戻した。

カエル娘が人化して美しく見えたとて、人畜の同盟は預言者の役割を受け持つ老母に否定された。モンマネキ悪戯を許せても姑の決断に感謝を捧げよう。なぜって今の世、僕も君も君の恋人だって、そして街を歩いてもカエル顔の女も男も見かけない。人の遺伝にカエルDNAが混入する悲劇がこの姑のかたくなさにより免れたからである。

旧約聖書にたびたび現れ人倫と神の摂理を説く預言者は、南米先住民神話にても活躍する。多く神話でdimiurges俗神がその役を担う(生と調理M17Warrau族の野ブタを創造したカルサカイベなど)が、本神話では老母が、努力はするがふらつきまくりのモンマネキを正す預言者役を受け持つ。

 

モンマネキの妻問い懸想が続く;

arapaco鳥(キツツキの一種、左挿絵)が樹上に休むに目をとめ「ひょうたんを満たすだけの樹液をおくれ」と呼びかけた。その夕の帰り道、道ばたにたたずむ姿がとっても魅惑的な娘がモンマネキを見つめる、その眼差しの真剣さが彼の目と足を止めた。肩にする瓢の重さの具合から椰子酒がたっぷり充満するとは知れる。その娘と婚姻を結ぶが、姑の介在でまたも破局する。理由が、見目麗しいのだが両の脚が一本棒、前爪は3本後ろが1の鳥の脚、その鱗刻みの足表が醜かったから(vilains pieds)。

 

続いて地に這う芋虫、金剛インコと都合4例の「異種婚姻」による同盟を模索するが失敗。

1~4の異種混淆の同盟を俯瞰すると再生産の体制をなんとか形成せんとするモンマネキの努力が読める。その間に魚が創造され(アマゾニアでは野ブタと同等の食資源)、カヌーも発明される。人間社会の文化程度が徐々に熟成される。そしてレヴィストロースは4話(金剛インコ)をして「これは獣婚と人同士の婚姻を繋ぐ中間的経緯である」。人の婚姻同盟成立への架け橋(transition)としている(21頁表、写真)。

4話の金剛インコとの婚姻同盟;

空を飛ぶ金剛インコに「せめて幾ばくかのビールを恵んでおくれ」と声をかけた。その夕、綺麗な娘が桶を肩に村の入り口で待っていた。インコ娘とモンマネキは婚姻に至る。破局の理由はモロコシ一本で桶の5本が溢れるまで出来てしまうインコ技術であるのに、一本で事足りたとは思いもよらない姑は、使い残しのモロコシが山と残っているから「下準備をさぼった」と曲解し怒ったから、

インコ嫁は沐浴に出て帰らず飛ぶ空の上からモンマネキに謎の言葉を伝える。

Si tu m’aime, suis-moi! Trouve le laurier dont les copeaux se transformant en possoins>「私を愛するなら、探しておくれ。この世のどこかに「月桂樹laurier」がある、その木屑が魚に変わる」19

Monmaneki courut en tous sens a la recherche du laurierIl abbatit vainement plisieurs arbre a coups de hache. Enfin, il en trouva un dont les copeaux devinrent des poissons quand ils tomberent dans l’eau>>モンマネキは四方八方その月桂樹を探し回った。空しく幾度も木を切り倒したはてに、やっとの事でその木を見つけ出した。幹を穿ち水を貯め(カヌーの製作法)木屑を浮かべると魚に変わる。この世に生まれたばかりの魚、獲る技法はカヌーのアカ水からすくい上げるだけ。とある男が義弟(インコ妻の弟)にちょっかいを入れて、魚がカヌーからこぼれ川に逃げ出した。これが魚とカヌーの起源、魚が簡単には漁獲出来ない由縁があわせて語られた。

(ここにもM1の伝播が読み取れる。主人公が行き着いた果てに獲物を与える獣に出会う(ジャガーが野ブタを、インコは魚を)、両の挿話には妨害者が立ちはだかる(ジャガーの人間妻、インコでは義弟)

モンマネキ、次はインコ妻を探す旅に立つ。

義弟をカヌーの舳先に着かせ己は艫に。川を下ってインコ妻の村にたどり着いた。 (この世で初めての)カヌーを見るため多くの村人が岸辺に寄せた。インコ妻は女の姿に化けて群衆に紛れる、彼女だけがモンマネキに会いに来た。めざとく姉を見つけた義弟はインコに戻ってその肩に留まる。モンマネキは妻に近づかんと一人で操るも、カヌーは転覆しインコに変身して彼も妻の肩に留まる。

漕ぎ手を失ったカヌーは流され湾処(ワンド、魚が卵を産み付ける溜まり)に変身した。縒りは戻らずインコ姿でモンマネキはインコ界に残る。

 

レヴィストロース提題に戻る、

この第4話が何故、獣婚と人と人の婚姻の中間に当たるのか。前の3話はカエル、キツツキ、地虫との婚姻で、この後の5話は人の女(らしき)との結婚だから位置としては中間である。それだけでは説明が足りない。レヴィストロースも頁を割いてその理由を語っているが、部族民らしく簡潔に答を探ろう。

M1神話に答を示唆する処がある。

M1。母子婚を犯したバイトゴゴは崖の頂上に取り残され、一旦は死んでジャガーに助け出される。ジャガー宅で妻(火を扱う人の女)に邪険にされ、習い覚えた弓矢で彼女を射殺し、焼き肉を盗んで村に戻る。洪水が村を襲い彼と祖母だけが生き残った。

M354モンマネキ神話4話。きっかけは獣(金剛インコ)婚を否定する老母の差し金。インコは魚の創造を教えるが、義弟の裏切りで魚が川に放出されてしまう。妻を追って川を下る。モンマネキがインコに変わることで同盟が成立するが、人社会の文化維持は困難となる。

M1M354を比べると;

近親姦に対して獣姦、

主人公の孤立に対して(インコ妻に)逃げられる、

ジャガー(狩りの技法を伝授)に対してインコ(魚の創造を教える)、

洪水により村が全滅、これに対して人間界からの逃避。モンマネキの文化創成は不可能となった。

なお;
ジャガーと金剛インコはcongruence(思想は同じ、形態は別個)の関係にあるとわかる。congruenceとした根拠は右のコラムに、解説はをクリック。

両神話ともにきっかけの禁忌破り結果としての主人公の(未だ立ち上がらない)文化環境からの疎外は共通。

旧来の(自然の連続性を)残す環境を否定しつつ、文化に移行せむとする人の意志、その伝達内容が色も濃くにじむを認る。

続いて紹介する(2)アサワコ神話(Warrau族)とあわせて、自然から文化への図表PDFを作成した。クリックを。内容解説は次回。

 

神話学第3巻「食事作法の起源」を読む 1 了