図(右)の2重三角形の上部を「メタ神話」とすると、神話の似通い、伝播の原動力となります。この辺りは今回取り上げないが、課題として後述を予定する。

序の中略部は以下に

=この時点で取り上げたのは「英雄イシスの冒険」(
M529 Klamath-Modoc族伝承)およびその派生神話である。しかるに「イシス」には反対主題(アンチテーゼ)として「Dame Plongeon、アビ女」神話群が後の頁に控えている。英雄イシスとアビ女を併せての紹介、解説が必須だったのだが、その時(昨年11月)はこれを断念してしまった。

 

理由は掲載する図(左)の解釈がまとまらなかった事に尽きる。図はイシスとアビ女神話を挟んで挿入されている(本書87頁)。しっかりと、しかるべく文言とそれなりの行句でもって本図を解説されているのだが、読めば読むほど♪だんだんお家(理解)が遠くなる♪。焦った。
読んでも理解できない背景とは、これら行句がレヴィストロース一流の修辞でありその幻法に惑わされ、論証の本舞台に、努力を尽くしても、身を立ち入れられない。このまま苦闘しても時間の損出、呻吟の苦息を吐くのみに気付いた。虚心して、後日に取り組むしかない路は開けないと悟った。
昨年から本年
2月まで、すっかり忘れた。

迎えて如月霜の朝しばし数え、
♪その日がとうとうやって来た♪

くだんの図を開けて止まり、立ちつつ読みかえした。すると、=


本文に続く

 部族民通信ホームページ   開設元年6月10日 投稿2020年3月31日
 
ボロロ族酋長 
悲しき熱帯より
       部族民通信  ホームページに  
サイト主宰
蕃神(ハカミ)義男
   「裸の男」を読む 続き 上 (人類学) 2020年3月31日 

  続きの上      下に飛ぶ
 
   

部族民通信は過去、レヴィストロース神話学第4巻「裸の男、L’homme nu」の解説をGooBlogに取り上げている(20191031日~1118日、全6回)。加筆、書きなおしして当ホームサイト「裸の男を読むと」して全3(クリックで第一回目に移る)を掲載している(20191115日~30日)。

 =中略=(右コラムに掲載している) 



裸の男に掲載された「神話構成ArmatureduMythe」の図、本書87頁
(生と料理にて論議された)

右コラムからの続き=2点の引っかかり、これらが解読のカギとなると見当を付けた、それは;

 

1      図(上)を上下2の三角形の合成と読む。

2      現れの様とは経時性を示す。文化が勃興し生まれ出でる様、それは文化のdialectique(弁証法)を表す。

この仕組みを図式にした。(二重三角形の仕組み)をクリック

 

文化の有様を図式での共時性をみせる解釈を小筆はかつて発表している。文化三角形である。文化の基盤を共時性として分析している(周期性と文化、文化の立ち位置の狭隘さを示す図)をクリック。上図、文化の2重三角形の図は経時性として文化の成り立ちを表現している。

そしてこれら2の図(文化三角と二重三角)は対をなし、文化の有様を共時に、経時に説明しているーと理解するに至った訳です。

 

DamePlongeon(アビ女)神話とは(Yana族伝承M54679頁)あらすじ;弟に懸想し相姦を成就すべく共に旅に出て逃げられる。復讐の炎を天から落とし縁者村人を殺戮しアビ(plongeon水鳥)に変身する。

 

この逸話はイシスの冒険(M538が基準、本書43頁)神話群でも、一部に取り上げられている。イシス神話では前段の役割なので、レヴィストロースも解説に行を費やしていない。M546神話に入って、イシス神話とは分離して、この「アビ女」の神話としての特殊性を指摘している。神話紹介の前にアビ女神話群の何が特殊か、

 

幾点か挙げてみると。

 
水鳥Plongeonアビ、首に特徴的な模様がある。先住民は「人の心臓(椎間板)の首飾り」と比喩した。

1      水鳥のアビ(plongeon)は鳴き声が陰鬱、行動(湖水を深く潜り人には見えない)が不気味。

2      おおよそ新大陸南北の神話は文化創造を担うバイトゴゴなど英雄(ヒーロー)の物語であるに対し、plongeonアビ女はヒロインでありアンチ文化、同盟「破壊」の役割を担う。

3      筋書きにも反装飾(生首の首飾り)、反狩猟(食べられない獲物を獲る)、反同盟(人の孤立)などアンチ文化挿話が綿々とつながる。

 

4      総じて筋道が「反文化」に向かっている。

 

この「反文化性」にもかかわらず説明でレヴィストロースは「文化成立」の足取りを説明する図式としている。「文化」と「反文化」を統合するという、この整合性を見つけよう。

 

アビ女DamePlongeonM550 Atsugewi族伝承、本書103頁)神話

前段は昔の世界。その頃は石を加工し鏃とする技術を持たず、火を知らない世界だったと。擬人化されている登場者リス、イヌなどの機転でそれらを盗んで、狩り道具と火を所有出来るようになったとさ。

火と狩り道具を持つは文化の第一歩、しかしその後の足取りが;

 

Lynx(山猫、優柔不断、decepteur余計な事をしでかす)は悪夢にうなされ、男屋を離れ実家(母、姉妹の住む小屋、通過儀礼の後にはみだりに立ち入らない)に床を移した。妹(Plongeon)は、別の来訪者を気にしていたから寝る前に香り良い樹脂で身を塗りたてていた。渡りに舟、寝入るすきに乗じLynxは妹と交合した。翌朝、身の樹脂に張り付いた毛模様から、それが兄Lynxと妹は知った。

 

(仏語の原文では兄frere、妹soeurの年齢関係は不明、弟、姉かも知れない)

 

弟とするとLynxは年端のいかない若者、姉との婚(たわけ)は一時の迷いからだったかも知れない。寝入る際に受け入れ合図の樹脂塗り姉の「別の来訪」は言い訳で、弟の夜ばいを求めていた。近親姦への積極性があったかも知れない。

この解釈はイシス神話での「弟」に邪な欲情を抱く姉と整合する。また下段の「小さなモノ」への改造とも調和する。

 

相姦を恣意とするか突発とするか、恣意ならば誰の意思か、突発ならば誰がそれを装ったからか。独断で解釈するとこの舞台、演じられるこの辺りの劇とは;

 

姉と弟の相姦、姉の弟恋慕、姉の積極誘い込み、そして半夜で逃げられた怒り(イシス神話での一挿話につながる)。DamePlongeonの反文化性向と一致する解釈となろうか。皆様には別の解釈があるかと。

 

さて、

Plongeonは怒り狂い男屋に火を放った。

村人はPlongeonの怒りを鎮めるためにLynxを差し出すと決めた。しかし;

non sans que Papillon eut renplace son penis par un organe derisoire蝶がLynxの男根に細工した、とっても小さなモノに取り替えたのである。こうの状況で二人を送り出したら禁忌犯しを村人が追認する証しとなる。そこに畏れがあったのだ。

 

二人は旅に立つ。Plongeonは太陽を呪い日の入りを急かした。夜が突然やってきた、しかしLynxの整形男根は小さかったから、二人は結合出来なかった。Lynxは木片を己の身代わりにして、逃げ帰った。

怒りのPlongeonは村に戻り、天から降り落ちる火で破壊した。村人は大籠を仕立て天に昇るが、ツギ穴からこぼれるかに脱落し、火に焼かれた。Plongeon ははじき飛ぶ心臓(原文では椎間板、それに精神が宿ると信心があったのだろう。邦訳で心臓とした)を集め、クビ飾りとし湖の底に潜んだ。

Aigle()Plongeonを訊ねに湖水回りを続け、とある兄弟と出会った。毎夜「気味の悪い鳴き声を耳にする」とAigleに伝えた。それが姉PlongeonとAigleは見当をつけた。兄弟は鹿の骨の鏃を代償に狩り獲ると請け負った。かくしてPlongeonは討ち取られた。

Aigleは死体からクビ飾りをもぎ取り、確認すると心臓二人分が足らなかった。

 

その二人分は彼女が湖水回りで探し当てた父、兄の心臓に他ならなかった。併せてやっと家族の心臓が揃った、蘇生呪文をかけ生きかえらせて、家族成員を元通りにした。それからは幸せに暮らしたとさ。

 

アビ(水鳥)の死体に果てた妹Plongeonには羽毛を剥いて剥製にして「お前、これからは春になったらその奇怪な鳴き声をたてるのだと」と言い含め、湖に放したとさ(Athugewi族の言い伝え)

 

Aigleが別個に回収していた二人の心臓については別の伝えがある。Yana族版(M54679頁)は;

TsorejowaAigleと同一人物)はPlongeonを狩り取った兄弟から「遠く北の方からすすり泣きが聞こえてくる」と聞きつけ、向かう。地面に愛おしい父が頭だけ出ていた。掘り起こし地表に横たえ、骨と皮に果てた父親を確認した。妹Plongeonの死体とあわせて村に戻った(Yana族版では破壊者の妹Plongeonを湖に棄てる仕打ちを伝えない)。

 

まだ見つかっていない兄(あるいは弟)を探しに出た。

このころ父母と二人娘の家族が山の中腹に住んでいた。柴集めに森に出ると「歌」が聞こえた。出所を探ると地に、頭だけ曝す男が涙を流していた。歌と聞こえたかすれ声ははすすり泣きだった。二人して地を穿ち二日をかけて身体を地表に出した。骨と皮しか残っていなかった。

家庭に戻って、父親は隣村の惨劇を聞き知っていたから、焼き討ちの生き残りと判断して「養生を尽くせ」娘に命じた。

 

確かに男はPlongeon虐殺の生き残りだった。

姉妹看病の篤きを得て回復に向かう。ここで神話は2の挿話を挟む。

 

1      男は泣きやまず、滴る涙が小川となって野に流れる。その川に鹿が群れとなって立ち寄る。後に男は鹿を狩る。

涙は山中に湧く「塩泉」の由縁で狩りの起源につながる。

2      回復途上にヤマアラシが夜な夜な訪れて、ベッド回りで「力が残っているなら捕まえてごらん」と踊って挑発する。恢復を待って男はヤマアラシ(複数)を捕らえ、棘毛を添い寝してくれた姉妹と義母(となる)に贈った。ヤマアラシの段はM543(イシスの冒険神話、Modoc族伝承、70頁)にも伝えられる。

 

ヤマアラシの棘毛は服飾に用いられる。若い男は結婚を申し込む際に、娘の母親にたっぷりとこれを与えなければならない「婿の賦役、prestation」、結納金か。結婚できるかの決め手である。ヤマアラシにまつわるこの価値については、前作第3巻「食事作法の起源」月の嫁神話M426Arapaho族(ロッキー山脈を挟んで東に対峙する)に詳しい。

 

男は塩泉により来る鹿を多数狩り取り、義父(となる家長)に贈った。これで両親はOKです、なにせ喰ったこともない肉、きらびやかな宝飾(ヤマアラシ棘毛)をたっぷりもらったのですから。(狩りの起源、服飾の起源)
では娘らは。これは愚問ですね。

 

気に入った、魅せられた、添い遂げたいなんて愛着が昂進しなければ、首面を出してただ泣いている骨皮と筋野郎を、2日もかけて瓦礫を掘って埋め揚げて、村まで背負って戻るモノか。

 

地面に露出したぽっこり頭を見つけて;

「こいつ、汚いけど=La tete etait salle et hideuse(本文から)、よく見たらイケ面でないかしら」「私もそれを思ってたわ」「助けてやって恩を着せたら独り占めできる」「ズルい、二人占めでしょう」

こんな会話が交わされていたはずだ。レヴィストロースは特に言及していない。

(裸の男続き    下に飛ぶ

 

 
    ページトップに戻る