ボロロ族調査のレヴィストロース、26歳


金剛インコ、図は本書挿絵


ピラニア、魚は先住民の重要なタンパク源である。






野ブタ、ペカリ種

図は本書挿絵から

 部族民通信ホームページ  投稿6月30日   開設元年6月10日 
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ボロロ族酋長 
   人類学神話哲学フランス語修辞レヴィストロース解説        サイト主宰・蕃神(ハカミ)
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M20ではdonneur(嫁の贈り手)は金剛インコである。Prenneur貰い手はインコから妻のみならず、尾羽も貰い受けている。男としての地位、財産を金剛インコに負う関係になっている。女の貰い手prenneurのボロロ族がこの一方的な依存関係を終局させるとし、恩のある女の贈り手donneurを殺戮した。

M20の特異性をレヴィストロースはかく語る;

Lanalyse de M20 verifie que, conformement a notre hypothese, le mythe bororo respecte le code des mythes ge et tupi correspondants (M16, 18) mais au prix dune distortion du message, lequel concerne lorigine de certains biens culturels 以下略>

102頁)

訳;M20を分析すると、私(たち)の仮説を肯定する方向で、この神話はジェ語族、チュピ語族の同等の神話(例:M16,M18)が用いる符号(code)を採用していると確信するが、メッセージの伝わりにある種のねじ曲がり(distortion)  の代価を払っている。これは幾つかの文化財産に関係している。

注:文化財産とは金剛インコがボロロに与えた尾羽に加え、石などを加工した装身具。しかしながら、なぜ装身具が関わると族民の思考はねじ曲がるのか。疑問の答えは苦しいが以下を考えた。

1      族民とインコとの関係は他部族が遵守する女の贈り手・貰い手の責務付きの同盟ではない。ボロロ族は支族内婚を実施しているから、贈り手が貰い手ともなる。故に賦役prestation責務は少ない(無い)

2      インコは族民に嫁、(儀礼用)装身具、儀礼プロトコル(聖なる笑い)を与えた。これは文化創造において火の発見(ジャガーから貰う)と同等の価値があろう。すると;

3      インコをカルサカイベ(姻族を野ブタに変身させた)と比定するのではなく、ジャガー(英雄バイトゴゴを養子にした)の立場と重ねる要がある。

4      Wundurucu族の野ブタ起源神話(M16)がボロロ族に伝播して(M20M21、レヴィストロースがそう語る、後述)ボロロ社会の中で語られる過程でジャガーの宿命(妻を殺すにまかせ火は盗まれ)自然に戻った(M2以下)、をインコに重ねたのであろう。インコには儀礼に関する文化財を人に伝授して、自然に戻る必然があった。

5      伝播で生じたdistortion(ねじ曲がり)とは母系ながら非母系居住Wundrucuru族の神話(女の贈りと受け手に規範がある)から、母系かつ母系居住のボロロ(左記を慣習としない、不等価交換の意味を知らない)流儀に変化した。

 

M21ボロロ族 野ブタの起源を紹介する(原典引用はなし)

昔々、男達が漁に出ても魚1尾も持ち帰れない日が続いた。女達に笑われたうえ「これからは私たちが魚を獲る」と宣言されてしまった。女達は漁に出るたびに大量の魚を持ち帰り、男共を見くびる事になった。男達は奸計を疑り、鳥を遣わせ見張らせる。カワウソと女どもの密会が露見してしまった。(ruse:策略、計略の意味。これを密会としたのは女を通して魚が手に入った処で喜べない事情があるから)。翌日、男達はカワウソをおびき寄せ、一匹を除き殺戮した。女の大漁は止み、今度は男が女をあげつらう番になった。

女は面白くない。トゲの混じった汁を男に供した。一気に呑んでトゲが刺さり男は「うっうっ」としか発声できない喉になった。そして野ブタになったとさ。(102頁)

不貞をはたらいた女がそれを誅した男に懲罰を与える。この倫理感覚は贈り物を捧げる相手を火刑に処したM20と同じ。M16がボロロに伝播して、野ブタに変身する不届き男を創造する必然に迫られた。以下は後述する。

 

Marquons ici un temps d’arret, pour reflechir sur notre demarche>

訳:ここで小休止してこれまでの論点を整理してみよう(105頁)。

M16~21の近親間の不和を比較しています。

Mundurucu族(M16の担い手)では男と姉妹の関係に//がかぶさる。血族の破局である、兄弟姉妹の諍いがsequenceシーン場面となる。M16の冒頭、俗神(カルサカイベ)が姉妹の嫁ぎ先のキャンプに居を構えウズラと野豚との交換を姉妹(を通してその夫)に要求して断られた場面である。この顛末を△―//―○=△血族の破局、姻族は維持とした。一方Bororo族のM21は姻族、妻と夫の破局○=//=△がシーケンスで、両者(M16,21)には「必ず破局のする成り行き」をschemeが窺えるから、伝播→があったとしている(100頁)。

(血族、姻族の軋轢は前回=3=にてアラカルト作成、ご参照の方は)

 

次にsequences単位でM16,20,21を比較する。

その手順はelements要素を引き出し、思想であるpropriete(属性、特質)を特定したうえで比較する。従来の「登場人物と筋道」すなわち形formeの似通いのみで伝播の近遠を判定する神話学とは異なります。M16で俗神カルサカイベが狩る鳥を主要なelementとして取り上げている。デジカメ化した104頁を掲載しています、参考に。

gibier鳥=airUterre(空と地の同盟)と判定しています。=としたが本文ではイコール(=)2本の重ねではなく-が3本縦に重なる。これはcongruenceを表す。この語を含めシンボル解説をアラカルトに説明したのでここをクリック。


 
図:登場人物(動物も)の属性(proprietes)の比較対照から流れ(sequence)の比較し関連を検証するレヴィストロース流の分析手法(その一端)104頁

記号のUunion同盟です。M16で俗神が野豚と交換を求めたウズラ種の小禽、地を這い空に飛ぶ、これを持ってして地と空の同盟を示している(換喩、俗神のカルサカイベは天地同盟、正義は我にあり、故に不等価交換には正義があると主張している)。M16は→M20とあり、→とは転換の記号。M16が伝播してM20に変換した意味。M20は儀礼装身具の起源神話です。インコが川底から見つけ出した石が、装身具の起源。よって水と空の同盟の結果としてそれが存在する。(ボロロ男が儀礼に着する装具には水と空からの安堵を受けている)

M20M21に伝播している。そちらでは漁がelementに取り上げられている。魚は水とcongruenceの同等性を持つとしている(gibiereau、ここの=も3本重ね)。ここにウズラと魚の思想において同一性が成り立ち(水と地は低位置、空は高位置、それら同盟が基盤であるとの主張)、M16が基準となりM2021への伝播傍証が成り立つ。同一性は、elementの上段の言い切り(場)sequenceでも働き、その上、最上層のarmatureschemeでも継続してゆく。

 

これら神話はM1~7で展開した自然回帰VS文化希求の抗争を引き継いでいる(105頁の写真)

M16では女貰い手の義務(贈り手に食料を与える)をおろそかにしたから、姻族が野ブタになってしまった。人の交合の叫びとブタの交尾のブーブー啼きを同期させ、Uで現している。

M20は儀礼に用いる飾りの起源をテーマにしている。神聖笑い(rire sacre)と俗なる笑いの分断のとは、聖を儀礼で謳われる祝詞(唄か)とし、俗を平素の言葉と解釈すれば理解が進む。インコは儀礼の飾り物と式典手順をボロロ族に渡し教えた。ジャガーが火と調理を人に教えた神話と対をなす。

 

M21はボロロ流の野ブタの起源。

Puisque la transformation des hommes en cochons dans M21 resulte---a linverse de ce qui se passé dans M16---dune disjonction depoux qui se heurtent, et non de leur union charnelle>105

訳;人が豚に変身する過程はM16M21では真逆である。注:M16では俗神が「汝等の肉を喰らえ」と呪いをかけたら野豚が「交尾の唸り」をあげるかに姻族の全員が人も、性にも構わず交合に狂いだした(これがU)。M21では食事にトゲを盛られた夫が「唸り」野豚に変身した。すでに配偶者間の緊密な交流(union charnelle=肉の同盟と書かれている)は途絶えているから、分断//がその状況を表す。

そもそもカワウソをのさばらせて不漁を続け、その原因すら掴めなかった男。対して女はカワウソと同盟を築き、大漁を続けた。男が野ブタに変身したのは道理。M16->M21の伝播の過程には野ブタが人に由来するスキームと、規範を遵守出来なかった側が変身するとのarmature骨格が(distortionを含むも)読み取れる。

 

さて、

次頁でレヴィストロースは意味深い課題を提起します。神話叢1M1~7)と2M16~21)の比較に関して。

ils sont partiellement ISOMORPHES (大文字は筆者) et supplementaires puisquils posent le problem de lallience matrimoniale ; et, partiellement aussi, ils sont HETEROMORPHES () et complementaires, puisque de lallience matrimoniale, chacun ne reticent quun aspect>(106)

訳;それら(第一神話群「鳥の巣あらし」とそれに対する「野豚の起源」神話群)は部分的にISOMORPHESで補充的である。なぜなら母系社会の婚姻同盟で(特定されている)問題を等しく提起しているからである。その上、部分的にHETEROMORPHESで補完的である。なぜならその同盟から、それぞれはある一つの様相しか引き止めないからである。

「これちょっと難しいけど分かるかな」レヴィストロースの声が聞こえてきそうだ。

 

過去、遭遇した事のない言葉、ISOMORPHEの来し方を調べると「化学用語;異質同像」とある(白水社大辞典)よく分からないからrobertに頼る。<propriete que posedent deax ou plisieurs corps de constitution chimique analogue davoir des formes cristallines voisines> 類似した(analogue)組成を持つ複数の物体の結晶の像が近似(voisine)する性質とある。analogueは「一部が類似する」との意味が強い、voisinは「全体として近似する」のでanalogueよりは同質に近いと言える。しかし「同質」までには行かない。よって「何となく似通う物体が結晶化するとかなり近似する像を見せる」が正しいだろうが、長すぎる。その意を含んで「異質同像」を理解する。その上、補充的でもあると曰う。

HETEROMORPHEはその逆として「同質異形」と訳す。この訳には「近似する2の物質が(似通うけれど)異なる像を見せる」の含意を持たせるとしよう。さらに補完的がつきまとうとか。

そして鳥の巣あらし、野豚の起源の両神話群に共通するのは(常につきまとう)あの問題(le problem)だそうだ。「あの問題」とは文化への移行の妨害要因として働く母系社会が孕む「連続」の概念、そして女の贈り手貰い手の同盟関係の脆弱さに発する混乱である。




図:
S1(システム1、左の縦線)は火の取得神話。S2(システム2、右の縦線)は野ブタ起源神話である。右広がりの斜め破線はS1で扱われない野ブタがS2の主題となる図式。
この野ブタ拡散線がIso,Hetero(後述)理解の鍵となる(本書106頁)
Heteromorphe、IsomorpheにつきPDF(HeteromorpheIsomorphe)を作成した。クリックを。

 

M1(基準神話、ボロロ族鳥の巣あらし)を思い起こそう。

主題は母系の「連続」の固執である。成人の通過儀礼は母系からの男子の分断である。分断を拒否して(母子の同居、相姦)、父と母の同盟を破断させた。兄弟、同じ部に属する男子との相姦もM2以降、広い意味での近親姦として語られている。母系連続の希求が自然、放任、放縦につながるとは前述した。

母系連続を社会的に葬っても別の問題が発生する。

姻族の破局である。レヴィストロースの言葉で(女の贈り手貰い手の繋がりとは)<des liens avec des etres dont la nature lui parait irreductible a la sienne>贈り手は自身の立場とは対立する側(貰い手)と同盟を結ばなければならない。妥協に至らず係争におちいった例がM16以下、神話に語られる。

俗神カルサカイベのM16の行動を見よう。

女の貰い手(カルサカイベの姻族)は、婚姻同盟(allie)を優先するか己が属する母系集団(filial)を優先するのかの「相克」に身を挟まれる。社会規範は女の貰い手側に義務(prestation)を課すが、小禽一羽と野ブタ一頭の交換には(カルサカイベの姉妹が)拒否する。結局、この不等価交換は成立せず姉妹はallie(姻族)を優先した。しかし社会のしきたりに反したから姻族全員はブタに変身させられる。M21では女系(血族)優位に固執する女が夫をブタにした。

さて、一つの問題le problemeとは、姻族の優先と母系維持の2の様相が、それに反する原理と相克すると見えた。その結果としての同盟の崩壊の「2の形態」につながる。これがheteromorphe同質異形

鳥の巣あらしではヒーローの彷徨、部族の破滅(ヒーローが霊に化けて父母を殺す)。最終には「断絶の文化社会の創造」となる。自然を拒絶して文化を創造するテーマである。M16にしては野ブタ(料理)の文化創造である。異質同形(isoforme)とする処とはその発端が(母系内部の連続、放縦性=対=姻族同盟に固執する姉妹、それにくびき(断絶)を掛ける俗神)に分かれている点である。

さらに、

レヴィストロースはもう一対の概念を導入している。supplementaire / complementaire,この意義を片付けるとしよう。

勝手解釈ながらcomplementaire(補完的)とは1の思想を1の実体と比定する「さらに別の実体を課乗し補完的に説明する」としよう。「彼女は美しい(思想)、目が澄んでいる(1の実体)、色白(別の実体)だから」色白がcomplementaire美の思想への課乗。一方supplementaire(補充的)はこの真逆なので1の実体を1 の思想で説明して「さらに別思想で補充する」とする。「彼女の目は輝く(実体)、美しさ(思想)と優しさ(別の思想)を兼ね持つから」優しさがsupplementaireとする。これで行こう。

 

本書106頁の表に移る。(上写真、全体の解説をPDFにしている、移動は下のボタン)

S1はシステム1で、調理の起源神話叢は(M1~12)。S2 は野ブタの起源神話(M16~21)。

これら2の神話叢は文化創造における同盟と決裂を反映して、isoformeでありheteroformeでもあるは前述した。Isosupple補充的(S2S1を補強するもう一つの思想である)、heterocomple補完(S1S2の思想を補強するもう一つの物である)とレヴィストロースがのたまう。

まず各叢の思想解析から取りかかろう、

共に文化創造の主題を持つ、火のみでは調理は成り立たない、食材がないと文化にはたどり着けないし、野ブタのみでは文化(調理)にならない。S1の火の文化に野ブタ調理を加えたのがS2。故にS2S1を補完comlementaire する。

S1S2isoformeで補充supplemetaireの関係でもある、それとは。

S1は火の獲得、S2は野ブタの起源。両の神話の形状は異質です、しかし「姻族(allience)同盟への収斂」という思想でS1は母子姦を否定し村落を破壊する。S2は義務を履行しない姻族を懲罰する。文化への移行とはS1火の原理をうち立てるとあわせ、S2制度(姻族優先、女貰い手への義務の創成)が加わる。S1S2に補充している図式が写真です(106)

部族民から聞こえた会話を引用、

酋長さん「カルサカイベは真の文化創造者だな、しきたりを守らない野蛮族民どもををブタに変えたから。あの種のブタ(ペカリ)は人由来、だから自然に気兼ねしないで狩りとれる。ヤッホー」

副酋長さん「それというのも元々、母系に拘泥していた野蛮野郎を殲滅しちまって、火という文化の思想を持ち込んだバイトゴゴがいたからだよな」

二人揃って「んだ、んだ」

106頁の解説をPDFにしているISOMORPHEをクリック)

 

第一楽章と第二節のまとめとして。

トッカータとフーガ、スバル星のテーマ(247頁)から一節を引用すると;

en dereniere analyse, ces differences se reduisent a autant de codes , constitutes a l’aide des categories de la sensibilities : gout, ouie, odorat, toucher, vue…>

訳:これら神話は内容において大きな差異を見せている。論じてきたように官能則による符号(code)付けの成果を取り込めば、それら差異は味覚、聴覚、嗅覚、触覚、視覚の5に縮小できる。

鳥の巣あらし神話では味覚(goutgustatif)を一つのcodeとしている。父に謀られ絶壁に取り残されトカゲを喰らう。別神話では毒流し漁の獲物の独り占め、大食らい、生食いに喜ぶ女など。それら経緯と結末をsequence(シーン)としてあげる。これらが反文化として取り上げられている。野ブタ神話では食材の独占、すなわちそれが反文化、この起因と懲罰が取りあげられる。
4の了

20171128日初稿、2019630日加筆 )

 

追記:近々、残り200頁分のあらましを紹介します。