ボロロ族酋長さんの正装。冠は金剛インコ。
の尾羽。手には弓矢。



このように着飾る特権には儀礼の采配、狩猟での引率、優先が付随する。これがが男の資産である

血族姻族、
女貰い手贈り手、同盟と破局を掲載写真を通して解説した
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ボロロ村落の実測(に近い)図、説明は




写真:ボロロ族、夕に男は集まって儀礼が始まる。夜半まで続き、寝静まるのは夜明けに近い(同氏の著作から

狩人に女はいない、漁師に女はいない。青木繁海の幸。


写真:調査されたのは先住民族だけではなかった。構造主義者にして哲学者なる男も観察されていた。「文化人類学のヒトって真っ白ね毛むくじゃら」正しい観察が(ボロロ語で)聞こえていた。毎朝、ボロロ式シャワーを浴びる著者と検分するチビッコ民族学者たち(同氏の著作から)
 部族民通信ホームページ 出稿6月30日  開設元年6月10日
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ボロロ族酋長 
悲しき熱帯より
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     神話学 第一巻 生と調理 3 1に移る 2に移る 3に移る 4に移る  
   

基準M1のあとボロロ族の邑落の構造を図で紹介します。東西に引かれた(仮想の)線で2の部に分離され、それぞれが4の支族を有します。詳細は既述(に)。この民族誌の紹介のあと神話分析が始まります。神話を2群にわけてボロロ族とジェ語族の幾部族との対比分析です。ここでsequenceの符号による解析を披露しています。

 

2変奏曲の表題は「変奏曲ジェ語族」。

火の起源を主旋律とする6の神話の変奏を紹介しています。本書の主旋律はM1「ボロロ族、鳥の巣あらし」で奏でられている。そのあらすじを改めて述べる;



写真:ボロロ族の鳥の巣あらしの舞台となった絶壁、本書から

断崖絶壁、頂上に少年バイトゴゴは取り残された(本書から)

<絶壁に鳥(金剛インコ)の巣に雛を求める親子。子の非協力ぶりに父親は怒りハシゴを外し自分だけ村に戻ります。子はトカゲの生食で飢えをしのぎますがハゲワシに尻穴をついばまれる(死ぬ)。ジャガーに助けられ狩りの技法を伝授される。ジャガー妻を射殺してジャガーが文化の担い手となる可能性を閉じた。以降、ジャガーは森に住む。トカゲに化けて村に戻ります。村を洪水が襲い、全ての火が消えた。ヒーローが守った火(ジャガー伝授)だけが残った>この筋と旋律がどのような旋律と和声の変換をへて変奏されているかを探る、これが2部の目的です。

まずはM1,2,3では言及されていない火の取得のsequenceを比較します。

神話7( M7, Kayapo: origine du feuカヤポ族)火の起源あらすじは;

Ayant repere un couple d’aras niche au sommet d’un rocher abrupt, un Indien emmene son jeune beau-frere, pour l’aider capturer les petits…>(P74)

訳:絶壁の頂上に金剛インコの巣をみつけた一人のインディアン(先住民)は義理の弟(ヒーロー、ボトック)を従え、雛を捕らえるとした。原典の引用無しですが後続は;

義弟ボトックは卵が二個しかないと言い張る、卵でもいいから投げ下ろせと命令する義兄に卵を投げつけるが、それらは石に変わって義兄を傷つけた。怒りハシゴを外して一人、村に帰った。取り残され空腹のボトックを助けたのはジャガー、家に連れ帰って焼いた肉を振る舞った。しかしジャガーの妻はボトックに冷たく当たる。嘆くボトックにジャガーは弓矢を与え、妻を殺すようし向けた。ジャガー妻を殺したボトックは焼き肉を土産に村に戻る。男達に焼き=調理の秘密を話すと「火を盗もう」とジャガーの巣に遠征する。その場の肉を焼いてたらふく食べて、熾火を盗み揚々として村に帰った。今の世、ジャガーが人に対敵する訳は、人に火と弓矢の秘密を盗まれたためである。<Il chasse avec ses crocs et mange la viande crue, il a solennellement renoce a la viande grillee>以来、ジャガーは牙で獲物を殺し、生肉を食べる。厳粛に、焼く工程を拒絶したのだ。

 

M1の主旋律であるインコの雛を取得するアンチヒーロー(父親)の「企み」はM7以降でも外れる。原因は「年少の息子、義弟の不服従」。帰属する支族を異にする壮丁と少年の諍いがここでも読み取れる。この第一変奏に続いて5の変奏曲が続きます。これらはそれぞれに小さな差、あるいは顕著な違いが認められます。従来の「神話学」では違いとは伝播する過程での不手際、これをvariantes=変異として、その差異の多寡から歴史、民族的な距離を語っていました。レヴィストロースの手法は神話表現の背後に隠れる「思想」を解明して、表現の変異から思想の振れを比べる処にあります。

Le cru et le cuit 85頁の表をPDFでご参照ください。解説は下記に

M7~M12は第二変奏曲です。

M7,8は同一民族(Kayapa,M9~M112の部族(apinayetimbina)ながら近接している。)M12 (sherente) は習俗、制度で異なる民族。

1~7の縦列はsequence=場面です。場面ごとに符号codeを設定し、符号化codageを+-で発展させている。0は記述が欠けている。

 

1ヒーローの行動とは積極な反逆の表示があったか。「巣に雛は見つからない」の偽りは+、親インコの反撃で雛を盗めなかったなど消極は-です。M7では「雛はいない卵だけだ」と子は伝えます。しかし義父は(親インコの行動など)間接証拠から雛に育っていると知るから「じゃあその卵を投げろ」と命じた。子が投げた卵が飛礫に変化して義父を傷つけた。「雛はなく卵」は子の偽り、これは明白ですが当神話の採取者(サレジオ会神父)の脚注を尊重して「何らかの事情でそうなった、子に反逆はない」。巣には無いはずの卵を投じてそれが宙で礫に変化したら奇蹟であるけれど、神父がそれと主張するからレヴィストロースは否定できない。括弧付きの(+)にしています。限りなくカッコなしと読み取ってください。

2ヒーローの汚れとは、己の屎を喰らう汚れの果ての死が+。鳥に糞をかけられ身はそれにくるまるだけは-。

3ジャガー注意とはジャガーが取り残されたヒーローを自ら見つけるか、ヒーローの合図で見つけるかの+―です。(例えばM9-はヒーローがつばを吐いて知らせる)4はジャガーが木に登るか、ヒーローが下りるか。5の無関心とはヒーローはジャガー妻に復讐する。この仕打ちにジャガーはいずれにも無関心だが、妻が殺されても無関心+、傷を負わされても無関心の差(-)。

6妻の行動は積極的にヒーローいじめ+、消極-。7は火を盗まれたジャガーが人へ敵意を抱くか、無関心か。

これら筋立て(sequence)は前回までのschemeの「連続と断絶、nature/culture」との繋がりが認められます。+は断絶(その方向を加速する、それを望む踏みだし)と断定できます。基準のM1、ボロロ神話では連続に拘泥していた少年が、遺棄され死んで様変わりして断絶への希求が旺盛となります。M7,8M1と同じく、筋道の中に、例えば父親への積極反抗など断絶志向が表現されている。

レヴィストロースの指摘は

1 kayapa族(M7,8とのボロロとの共通性が顕著、項目で(+)が多い、一方apinaye/timbinaは断絶の否定、無関心(―)で占められる。

2 M12sherenteには内容に一貫性がない、しかしながらヒーローの反社会行動と妻の仕打ち(爪を立てて殺す仕草をヒーローに見せつける)など際だつ+がある。これは社会制度との関係か(sherenteのみが父系社会)と締める。

 

M1,2,3が奏でたschemeは原初社会の混乱と破壊、新たな文化創造です。M7~12についても同様であるけれど楽曲で言うところの「メロディ」に「火の取得」が加わった。そしてジャガー妻の行動の不確かさには、選択を強いられる局面でどちらも取る(複数神話)というアンビバレンスが浮きたつ。96頁の表(写真)をもとに妻の行動を説明すると、

良き料理の給仕と、悪い料理あるいは料理を与えない対峙、

養子(ヒーロー)への気遣いと忌避

肉噛みの音の許容とこれに対する拒絶

が語られる。

この表の解釈は気遣い許容は文化へ傾斜するが、忌避無関心は非文化側の対応と読める。アンビバレントながらも忌避攻撃の構えに収斂するわけだから、人として描写されるジャガー妻は文化への抵抗で貫く。結局、ヒーローに射たれ死ぬ。文化に向かう道筋に抗い自然に滞留しようとする意志がジャガー妻を(女の)典型として通奏低音に響く変奏曲でした。

(アンビバレンスなる語をレヴィストロースは使っていません)

付け足しのM13;「南米神話では鼻グマ狩りエピソードは散見する。その一つとして(パラグアイのガラニ族神話)」を挿入している。語りで狩人は女。しかしながら女狩人は存在するか?このテーマは本題からずれるのでにまとめた。

 

本書第2部は「作法のソナタ」で幕が開きます。姻族、血族間のしきたりを拒否し「善行」を侮蔑する族民の運命を取り上げています。

M16 Mundurucu族:origine des cochons sauvages(野ブタの起源)

Mundurucu族はTupi語族に属すが居住地はジェ語族のKayopoに近接している)

カルサカイベは息子コランタウを連れ狩猟キャンプ地の近くに居を構えた。キャンプ地に住む部族に姉妹を与えている。部族民は、野ブタ(caetetu種)の狩りにひがな、野に出向いた。カルサカイベはinhambu(ウズラ種)猟に専念していた。

Et chaque jour il envoyait son fils au campement de ses soeurs pour echanger des inhambu contre les caetetu tues par leurs maris.mecontentes du procede , les tantes du garcon lui font honte lui jetant seulement les plumes et les peaux…>93

訳;毎夕、彼は息子をキャンプ地に向かわせ、幾羽のウズラとその日しとめた野ブタ全頭との交換を申し立てさせた。兄の手口に不満を持つ姉妹(叔母、少年に対して)はウズラの対価にはこれだ!「羽片とブタ皮」を投げつけた。

泣いて手ぶらで戻ったコランタウを見てカルサカイベは「キャンプ地を羽で取り囲め」命じた。その内部にタバコの煙を雲にしてくゆらせた。

Les habitants sont etourdis qunad le demiurge leur crie : <Mangez votre nourriture> ils croient comprendre qu’ils leur ordonne de copuler : <aussi se liverent-ils aux actes d’amour en poussant les grognements habituels. Ils se tranforment tous en cochons sauvages>()

住民は地神(カルサカイベ)が発した「お前等、似合いの食物を喰らえ」の声に幻惑させられ「今すぐに交合せよ」との命令と理解して、ブーブー啼き声を発しておのおのが交尾し始めた。そして野ブタに変身してしまった。この野ブタはQueixada属、別名ペカリ。

 

先住民は狩りに規制を設けている。ブタ、バク、ジャガーなど大型種は日常、狩り取れない。死者が出たときにのみジャガーなどの狩りが(自然から)許される。悲しき熱帯にこの記述がある。ペカリは野ブタにして比較的小型でこの神話の経緯で元々は人だった(今も自然に属さない)を理由に、自然に気兼ねしない狩りの対象である。

M18Kayapo族(ジェ語族の有力部族):野生豚の起源に移る。

M16と同様のarmature骨格を持つ。ヒーローオインベは子を侮蔑した人々を、M16同様に、豚に変えて閉じこめた。オインベはこれらブタを必要に応じて一頭ずつ屠り、食していた。ある一人(妻の兄弟)が秘密を探り当て毎晩一頭ずつ盗んだ。ヒーローは怒って全頭を野に放った。これが野ブタの起源。

(かつて野ブタ群れを囲いに閉じこめ一頭ずつ屠り食していた。その名残が神話に語られているとレヴィストロースは論じている)

M16でカルサカイベは血族である己の姉妹、子には叔母、その夫の集団に食物交換を乞うた。M18でオインベは妻の出身部族、彼には姻族、子にとって母系血族にその子をとおして食を無心した。不当価の交換(小鳥対豚M16)、あるいは無心(M18)は非礼となるのか?姉妹は夫が狩った豚を鳥と交換するなどは拒み、甥を侮蔑した。M18では妻の係累(姉妹など女)は無心を拒否した。不等価、無心を求めた側がそれなのか、拒否した側が非礼か。いずれの側がしきたりを無視か。

神話の引用は続く、

M20 ボロロ族:origine des biens culturels装身具の起源

jadis les hommes du clan bokodori (moitie Cera) etaient des esprits surnaturels qui vivaient joyeusement dans de huttes, appeleesnid d’aras>. Quand ils desiraient quelque chose, ils envoyaient un des jeunes frères aupres de leur soeurs, pour qu’elle l’obtienne de son mari>100

拙訳:かつてcera部のbokodori支族の男達は超自然の精霊だった。インコの巣の小屋に住み、毎日を楽しく過ごしていた。必要な物が出る度に幼い兄弟を村に送り、妹(姉)に「夫が収穫したものから出してくれ」と無心していた。ここまで引用。

続き<妹が渡した蜂蜜は泡がたち酸っぱかった。なぜなら採集の前に夫が妻に姦淫したから。舐めてしまった兄弟は禁忌破りを怖れ、水底に隠れる石を探すと決めた。狙いの石を手にできた兄弟は、貝や硬木を加工して首飾りを作った。この成功で兄弟の笑いが変化した。それまでは笑いとは猛りの笑い征服の笑い、それが「犠牲となる側の笑い」すなわち精霊の笑い(rire des ames)に変わった。そんな笑い方など聞いたことのない義理の弟は、妻を遣わし小屋を覗かせた。第二の禁忌が破られた、女は男屋を覗いてはならないのだ。またも被害を被った兄弟達は、出来上がった装身具を姻族の皆に配り、火に飛び込んだ。かろうじて残った兄弟は飛び上がって金剛インコに変身した>

妹を妻に出した側が義理の兄弟の収穫を「当然の取り分」として要求している、正しく食客です。

 

M16~20,これら3の神話(M1719は本文に引用されていない)を伝える部族(Mundurucu, Kayapo, Bororo)はいずれも母系社会です。父親は己の出身の母系を引きずるから、妻が産んだ娘や息子とは出自が異なる。娘を差し出す主体は母系なので父にはdonneur(女の渡し手)の権利はなく、娘の叔父か兄弟がそれを有する。多くは長兄に集中される(M16カルサカイベの立場)。娶るprenneur側は娘とは別部、別支族の壮丁である。

こうした女のやり取りとは富(畑作地、小屋、女が持つ技術)の伝承手段となるが、系の異なる男同士(贈り手と貰い手)に軋轢、対立が往々にして生じる。

レヴィストロースは以下に解説している;

lhomme en possession de soeur ou de fille, condamne a nouer des liens avec des etres  dont la nature lui parrait etre irreductible a la sienne>105

訳;姉妹あるいは娘を所有する男とは、彼の立場と相入れない男との連携を形成する運命に呪われている。(訳注natureを立場と訳した)

M16でカルサカイベが不等価交換を要求したのは姉妹の夫に対して。なぜなら狩りとった獲物の分配権は男、夫にあるから、その分配権をよこせと。それら夫はカルサカイベにして「女の貰い手」なので、贈り手なるカルサカイベが提案する不等価交換を受け入れる義務がある。しかし文脈を読むと拒否したのは彼の姉妹、子には叔母である。そそのかし、しきたり破りを夫に働かせたのは女側である。

M18のオインベは姻族、妻側の支族に食物を無心して断られる。オインベは女の貰い手、となれば贈り手である姻族に食物を無心する権利はない。しかしM18で無心したのは「息子」である。彼は自身の出自に一員としての権利を要求した。要求した相手は母の姉妹である。母の姉妹らが夫から受け取る獲物分配分、その再分配を要求したのだ。断ったのはここでも女である。

いずれも断る行為が非礼となる。

 

女をやり取りしての姻戚関係、贈る側も貰う側も男は壮丁同世代、そして属する系(部、支族)が必ず異なる。もとより対立(irreductible妥協できない)が孕む同盟なのでこの要求は当然としても、ここに女が入り込めば不協和が鳴り響く。相手は応えず、応えるべきとする規範を地神が説教を垂れても、聞く耳を女はもたない。義理兄弟、その郎党への報復が渦巻くとは予測できる。

続きを引用する;

Toujours assimilables a des animaux, ces etres se repartissent en deux categories: celle du jagar, beau-frere bienfaisant et secourable, donateur de la civilisaion : et celle du cochon beau-frere malfaisant,utilizable comme gibier>105頁)

訳;これら(妻を娶った側)人物は動物に比定される。その1がジャガーで、好意的、義理の兄となってヒーローを助け文明をもたらした。もう一方が野生豚、義理の兄弟ながら(女にそそのかされて)悪意を持って規範を破った。狩りの獲物としての価値しかない。

訳注:ジャガーは前楽章(テーマと変奏)のM7~12に登場する。父親にハシゴを外され絶壁(高樹の梢で)飢えるヒーローをジャガーが助け、ヒーローの義父となる。人に文明(火と調理)をもたらした。ジャガーがヒーローをして(文化への移行を快く思わない)妻を殺させる。文化創造には邪魔だと

女の言い分に惑わされ規範破りに荷担した族民は、野ブタに変身させられた。この行為とジャガーの潔さは対照できる。女が介在すると非文化、自然へと流れてしまう畏れを孕むとの、神話のschemeメッセージが此処にある。規範の無視は自然への復帰に他ならない、食を独り占めできる自然に復帰したいとの女らしき行為である(あくまでも神話がかく語っている)。

 

M20(ボロロ族)は幾分、趣きが異なる。

1 donneur,妻を与えたのは金剛インコ。娶った側の食客となって、歌い笑って楽しく生活していた。

2 prenneur娶った側の義兄がインコに礼を欠いた。

義兄はdonneurを歓待しなければいけないとの規範を無視し、禁忌を犯して(採取の前に性交する)採取した蜂蜜を与え、金剛インコを侮辱し妻(インコの妹)を介してさらなる屈辱(男屋を盗み見させる)を与えた。その上に文明(飾り物、服飾など)を創成させて貢がせた。提供者にして恩人の金剛インコを火刑にかけるまでの仕打ち。悪しき作法を繰り返した側の大勝利。

神話は過去につながる現状をも伝えているから、今でもボロロ族のインコへの悪徳(abuse)「尾羽むしり、幼女()誘拐」などは継続している。

 

これら3M16,18, 20)の神話にはelements/propriete(神話要素と属性)の共通性から伝播(transformation)が明確とレヴィストロースはしている。一方、最後に引用(M20、ボロロ族)には特異性が目立つ。「非礼側が礼儀遵守側に大勝利する」筋はM16,18と正反対です。答えの鍵はボロロ族の社会制度にあります。

引用される神話には採取した部族名が記載されマトグロッソ原住民はsherente族(ジェ語族アマゾニア)のみが父系で、他は全て母系社会とされる。中でもボロロ族は母系(matriarcal)かつ母系居住(matrilocal)、この風習を厳格に受け継いでいる。習俗での男地位をみると「父」の機能と権威の欠落です。男、壮丁の社会からの疎外。村落は2の部、8の支族で構成されると前の投稿で述べました(アラカルトをご参照)。男がボロロに生まれたとすると;

生まれをcera部のbokodori支族、その中層(上中下の階層カーストがある)とする。成人の通過儀礼をへて生家(母の家)から離れ、男屋で活動、寝泊まりする。婚姻の相手は(対向する)tugarearore支族に属する中層の娘と決まっている。

その女屋に「婿入り」するが、自分が住む場はそこに無い。女屋には娘の母、叔母、時には祖母、姉妹、通過儀礼前の男子など母系集団が生活する。夜にも夫婦での生活は満足に送れない。そもそもボロロには夫婦なる心情がない(ようだ)、神話が語る筋道は夫婦の諍いばかりである。

子が生まれても「母の子」であり、父と所属する部が異なるから父権はない。

動産、不動産なる資産を所有し相続するのは女であり、母から娘へとつながる。男が所有するのは儀礼に用いる飾り、装飾法、それらの模様の利用特権のみである。より正確に述べれば、飾りの形態(特に金剛インコの尾羽の数や高さなど)、手足などをどの様に塗る「規定の相続」だけである。酋長さんが演じるボロロ族男の正装をご覧あれ。

弓矢など狩猟の道具と狩猟する権利(=悲しき熱帯、Bororo章を参考にした)は壮丁が持つ。これらの権利、資産が父から息子に継承されるかは(小筆は)知らない。どうもそうではなく子が狩猟技術を修得するのは叔父、祖父らの母系集団のようだ(あくまで推測、レヴィストロースはこの辺りの民族誌を語らない)

ボロロ男には儀礼装身具、狩り用具を自然から引き出す必然がある。金剛インコにはボロロ男にそれらを供出する必然があった。

 生と調理  その3の了