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Le Role du Philosophe (le regard de claude levi-strauss)
哲学者の役割

(LeMagazineLitteraire dec/1985より)

レヴィストロースが表題についてインタビューを受け、回答をまとめた雑誌の記事。興味深く紹介する。科学全盛の時期、哲学の有用をレヴィストロースが述べている。(御歳76、現役は退いていたがかくしゃく論理整然)

「哲学が廃れたのは一時の(アンチ科学の)哲学がもてはやされたからだ。今こそ、科学分野での知見を取り入れ、新たな役割を担うべき」が趣旨。衰退の背景を「実存主義」と結びつけている。

論旨の大筋は

1      自身の半生の振り返り、実存主義との出会い。

哲学との関わり合いを第一期、二期に分けている。一期は(文脈から類推するに)哲学教授資格(aggregation)を取得した(193122歳)から南米先住民の調査、アメリカ亡命をへて帰国まで(1945年)。この時期の姿勢は;

je me suis degoute de sa pratique, parceque les choix se limitaient a trois directions.>

私は哲学を生業とする将来を嫌った。その当時は(哲学では)3の選択肢か無かった。

その3とは;

une philosophie fixee sur des abstractions, une autre fixee sur moi et l’experience intime, une troisieme , une vaste experience humaine et en fait la mutilait>

1が抽象観念を弄ぶ純粋(fixee)哲学に携わる。哲学者の道。

2は自身に沈潜して思考する道。penseur、思索家の方向。

3には人間として幅広く経験を得る、しかし哲学実践を台無しにしてしまう。

3番目がよく分からない。評論家となって幅広く活躍する道だろうか。3のいずれも選ばず民族学に指向してサンパウロ大学社会学教授となった。経緯は当サイト、悲しき熱帯の真実1に詳しい。この期は哲学実践への反発となる。

 

2 二期を戦後の活動期とすれば、1947年(親族の基本構造)~1970年(神話4部作homme nu裸の人の出版)23年の間である。何が起こったのか。

j’ai traverse une seconde periode, que je qualifierai de resistance a la philosophie: lors de l’existentialisme>

訳;第二期に移ったが、哲学への反抗と規定したい、時は実存主義が世を風靡していた頃。

するとこの時期、彼が反抗する哲学は実存主義に他ならない。

j’ai adopte une attitude polemique vis-à-vis de ses conceptions parce que j’estimais qu’elles etaient une manniere de poser les problemes qui tournait trop radicalement le dos a la pensée scientifique>

訳;(サルトルの考え方には尊敬respectと敬服admirationを抱くものの)彼の考えを前にすると論争の姿勢をとってしまう。なぜなら、それら考えは科学的思考にたいして、突如背を向けてしまうとの大問題を提起していたのだから。

実存主義のおさらい;存在は思考に先立つ、思考は存在に規定される、存在を経験して自由に人は思考を形成できる。存在を経験しなければ人は思考を形成できない。

これら(サルトルの)主張をレヴィストロースが反論する。存在が先であるとは、人の思考が存在に規定されるなどあり得ないと。目の前の物体が存在するには、人の思考がそれを何と規定してからなのだ。これがレヴィストロースの物と思考の基本概念。

この主張の根拠にカントの「先験transcendantales」(経験を経なくても人は思考を持つ)が控えているは事実。彼は自らを(近代人としては当たり前の)カント信奉者と規定している。

 

レヴィストロースが人類学で展開した理論は、個人の行動、思考、社会の風習、儀礼など目に見える物を存在する形(forme d’existance)として、それらが目に見えない思想(ideologie)と対峙し、かつ相互に関連しあう「構造」を明らかにした点にある。イトコ婚という個人の実践(形)が「富と知識の安定継承」となる社会の思想と結びついている。こうした解析手法は「存在を経験し思考を形成する」実存主義では到達できない。イトコ婚の実際を幾通りか調べ、それが社会思想の反照であるとするには人類学者に「先験」が無くてはならない。さらに自然科学では「先験」が思考の基本となっている。

 

3 主題の哲学の新たな役割はこのあと展開する;

レヴィストロースは物理学、自然科学、人間科学で解明された新しい思潮を取り入れれば、哲学はその役割、地位を見いだせると勇気づける。<je crois convenable qu’elle (la philosphie) retrouve un role et eu place ala condition qu’elle accepte de prendre ce qui est obtneu, et dans les sciences physiques , et dans les scineces naturelles, et dans les sciences humaines>

 

最後に人間科学を加えている。人類学の成果は構造主義による人と社会のあり方の解明に尽きよう。


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