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狭き門について
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アンドレジッド

狭き門(La porte etroite)はアンドレ・ジッドの代表作である。発表は1909年、当時(19世紀末から20世紀初頭まで)はベルエポックの盛り、若き男女悲恋の顛末である。産業革命の勃興にあわせ商業資本を産業に転換して成功したフランス。19世紀後半のパリはおおいに繁栄した。新興ブルジョワ文化の成熟あるいは爛熟、淫蕩、び漫がパリの街角、至るあたりに風びした。「パリの喜び」(歌劇オッフェンバック曲、初演1886年)がその様を伝える。
ジッドは土地の所有と学識を基盤とする旧来のブルジョワ階層を取り上げており、これら新興階層を描いていない。

ヒロインアリサと(交差)イトコジェロームの接近と離反を筋立てとして、彼らの行動を献身と自制、必然と帰依に結びつけている。すなわち、主題は「自由」である。自由の希求と、近代人としての自由からの疎外を述べている。

物語の最終行でジュリエット(アリサ妹)が、夕暮れ薄暗がりの部屋の隅でジェロームを前にして「さめざめと」泣く。すすり泣いた暗がりが近世においての人と時代の隔離、生きる途惑いと生き続ける苦しみを露わにしている。

別のアラカルトで紹介しているが彼はカルテジアン、デカルト主義者であり、自身をして無関心無報酬の自由を追求した。決して恵まれた「めでたしめでたし」の個人の生活環境を追求せず、ましてそれを形成しなかった。彼自身、自由に生きた結果の報酬であろう。

Recit(レシ、一人称の語り)形式でジェロームの追憶が淡々と語られる。ジッドはロマン(3人称形式で筋を神の目から客観に語る)を幾作発表しているが、なんと申そうか、これらは名作ではない(と感じた)。1947年にノーベル文学賞を受賞するが、ひとえに「狭き門」が評価されたから。この1作のみでノーベル賞を受賞したと思う。(文章は会話と回想のみで易しい、原典読破をおすすめします。2019年6月31日)

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